ネットの一部方面でよく使われる「マスゴミ」というスラングは、私は好きではないので使わないようにしてきたのだが、使いたい気持ちも出てきている今日このごろだ。ここ1年余りの報道メディアの多くは本当にひどい。

提出された文書[財務省が提出した、森友学園の土地取引をめぐる記録]には、3年前の秋、首相の妻昭恵氏付の政府職員から、国有地の貸し付けをめぐって問い合わせを受けたときの応答メモもあった。

職員は「安倍総理夫人の知り合いの方(学園の籠池泰典前理事長)から、総理夫人に照会があり」と説明したうえで、学園が求める優遇措置について財務省の担当課に尋ねていた。

[同]

典型的な〈築地話法〉である。安倍昭恵氏付の政府職員から理財局が「問い合わせ」を受けたとか、「学園が求める優遇措置について財務省の担当課に尋ねていた」とか、昭恵氏の〈影響力〉によって土地取引額が下げられたと断言せずにそのような印象を読者に与える書き方だ。一方、肝心要の「応答メモ」の内容については、少なくともこの社説の中では一言も触れていないし、報道記事においてもろくに触れないという、いつものやり方である。

何カ月も前に片づいたはずの話なので今さらいちいち言うまでもないことなのだが、〈築地話法〉にだまされる人も多いので、一応述べておこう。件の「政府職員」の「問い合わせ」には財務省から返答があったが、「国側の事情もあり、現状ではご希望に沿うことはできないよう」だとの旨を同職員は森友学園側に伝えている:

つまり、けんもほろろに〈丁重にお断り〉されてしまっている。とてもではないが、昭恵氏が取引額に関して〈影響力〉を持っていたと解するのは無理である。

また、上記社説では、早い話が〈財務省がないないと言い続けてきた文書が出てきた。あったじゃないか。財務省の嘘つきめ。やっぱり首相夫妻は森友問題で不正を働いたのだろう。そうに違いない。きっとそうだ〉という感じのノリなのだけれども、しかし、このたび出てきた文書に、首相夫妻の不正行為の証拠となり得るどんな記述が見つかったのかというと、全く述べていない。それはそうだろう、そんな記述はないのだろうから。

ちなみに、このたびの文書により白日の下にさらされたのは、首相夫妻の不正ではなくて、籠池夫妻被告の悪行の数々であった:

財務省が国会に提出した学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る交渉記録では、詐欺などの罪で起訴された前理事長、籠池泰典被告(65)と妻、諄子被告(61)が執拗に値引きを求めていた。「あんたら罰が当たるぞ」「裁判で訴える」。時に声を荒らげながら、一瞬のスキをついて主導権を握る生々しいやりとりが浮かび上がった。
「籠池夫妻、執拗に値引き要求」 << 「日本経済新聞」]

「あんたら、いじわるや。死んだら地獄に行くぞ」「もう止(や)めだ。鬼、悪魔。あんたらばちあたるで」「お前らは信用できない。子供にも祟(たた)るぞ」

近畿財務局が、森友学園側と国有地の売買予約契約などを進める過程で残した応接記録には、副園長だった諄子夫人の「罵詈(ばり)雑言」の数々が克明に記されていた。

例によって築地や一ツ橋や内幸町の紙などアレな媒体はもちろん、圧倒的多数の媒体はこういった事柄について〈報道しない自由〉を行使している。〈とにかくアベが悪い〉と唱える上では不都合だからだろう。それはその手の媒体が昔からやってきたことではあるけれども、ここ1年余り、いわゆるモリカケ問題などをめぐる記事では特にひどくなっている。もはや報道とは呼べない域になろうとしていると言わざるを得ない。

まあ、強いていえば、今回の文書に関する報道において、NHKはバランスがとれているようだ: