冬枯れや夢は旅路をかけめぐる
(米米CLUB「浪漫飛行」を聴きながら)
何やかんやでかれこれ14年、まとまった日数を休暇としてあらかじめ確保するのが難しかったためもあって、海外旅行というものをすることができなかったのですが、というかそれは、ホテルを仕入れ値で取って5ツ星に1部屋1泊朝食込み8千円で泊まれた旅行屋稼業時代のようにはいかなくなり、かといってドミトリーを寝床にできるほど若くもなくなったせいでもあるのですが、今年はちょっと状況が変わることが期待できそうな雰囲気も出てきており、これはもしかしたら久しぶりに日本から出られるかもしれないと思い、何となくネットで情報を見つつ脳内妄想旅行をしていたところ、海外旅行をめぐる事情がひと昔前とはまるっきり変わってしまっていて、ポカーンと浦島太郎状態です。元バックパッカーで、元旅行業界人で、添乗業務の経験もある私が、全く旅慣れていない素人の気分ですよ。「ねんゆさーちゃーじって何ですか?」みたいな。いや、ちょっと大げさに言ってみただけで、燃油サーチャージぐらいは私も知っていますが。
まず驚いたのはLCCの料金の安さです。近年のLCCの台頭はもちろん知っていますけど、自分が飛行機と縁のない年月が続いたため、実際にこれだけ安いということを知る機会がありませんでした。
LCCの影響で、既存キャリアの航空券が安くなったことにも驚きます。正確にいうと、既存キャリアの航空券の実質的な価格は大きく変わっていませんが、かつては旅行代理店だけが扱っていた格安航空券とほぼ同額、同条件で、今はキャリアが正規割引航空券を直販しています。やはりこれはネットの普及によるところが大でしょうね。
ネットといえば、Eチケット(電子航空券)というやつにも驚きます。航空券と聞いて、まずカーボン紙が束になったものを思い浮かべてしまう私ですから、ネットで予約した場合には予約確認書が発行され、それを当日空港に持参して旅行代理店ブースで航空券と交換した上でチェックイン・カウンターへ行く、という手順を考えてしまいます。ところが、どうやら今は違うらしいのです。ネットでポチッとクリックして予約すると、程なくしてメール添付で送られてくるアイテナリーそのものがチケットの役を果たすので、それを自分で印刷して直接チェックイン・カウンターに持っていけばいいのだとか。うーん──。ところで、この「アイテナリー」(“itinerary” が訛ったもの)というのも、かつて日本では旅行業界用語だったはずですが、今では一般に使われるようになってきているのでしょうか。
「○月○日出発、○月○日帰国で、安いのはどれですかね」──などと、格安航空券屋で ABC Timetables を繰りながらやりとりした時代は過去になってしまったのですね。ちょっと寂しい気もします。
そして──これはあくまでも埼玉の南東部に住んでいる私の事情ですが──成田空港へのアクセスが最近は格段に良くなっています。かつては、うちから公共交通機関で成田へ行くには、いったん都心に入る形で大きく遠回りしなければならず、かなり面倒でした。今は、6年前に開業した成田スカイアクセス線のおかげでとても便利になっており、うちから成田までの所要時間は30分ほど短縮されているようです。昔はその途方もない遠さに不満のあった成田のほうが、今では羽田より近くなったと言ってもいいくらいです。
ということで、少なくとも私にとっては、ひと昔前よりかなり旅行に出やすい時代状況になっているのですが、ただ、円安のため買い物に支障が出るかもしれませんね。それと、とにかくパスポートの取り直しから始めないといけないわけですが(笑)