結局同じという怖さ
いまだにこういう寝言を言う人が多くて困ります。しかも、あろうことか、元厚労相が言うとは──。
女優の岡江久美子さんが、新型肺炎で亡くなられた。若い頃一緒に仕事をした。御冥福をお祈りする。発熱してすぐにPCR検査をしていたら手遅れにならなかったのにと思うと残念だ。医療崩壊などの間違った理由をつけてPCR検査をサボってきた政府の責任は重い。早くドライブスルーのPCR検査を導入せよ!
— 舛添要一 (@MasuzoeYoichi) April 23, 2020
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、素人なりにもできる範囲できちんと情報を得て理解していれば、分かるはずです。PCR検査をやったやらない、早い遅いということは、助かるかどうかということとあまり関係がありません。なぜなら、COVID-19には特別な治療法もなければ特効薬もないからです。
特に岡江久美子さんの場合は、その経過を見れば、PCR検査が遅かったから助からなかったのではないことは明らかです。
所属事務所によると、岡江さんは今月3日に微熱を発熱し、自宅で様子を見ていたが、6日朝に容体が急変。都内の大学病院に入院し、集中治療室で人工呼吸器を装着。その後のPCR検査で新型コロナウイルスの陽性と判明し、治療を続けていたが、23日に死去した。
こういう件でタラレバの話をするのは空しいのですが、あえてしてみます。
舛添氏の言うように、もし岡江さんが「発熱してすぐにPCR検査をして」その検査結果が陽性であったら、どういうふうに事が進展したでしょうか。岡江さんはその時点では発熱を訴えていただけの軽症者ですから、
- 感染症病室等に隔離。
- 指定の軽症者滞在施設(ホテルなど)に隔離。
- 外出しないように言われた上で自宅療養(自主隔離)。
──のいずれかです。いずれにしても、病室やホテルや自宅でただ安静にしているだけで、特別な治療や投薬を受けるわけではありませんし、8割はそのままで治って退院という運びになります。
一方、残り2割は重症化し、肺炎を起こしてしまいます。救急搬送され、特に重篤であれば人工呼吸器を着けられたりICUに送られたりします。
ほらね、早く検査をしようとしなかろうと、結局同じ流れではありませんか。違いは、感染者として隔離されるかどうかということだけです。そして、この「結局同じ流れ」というのがCOVID-19の怖いところであって、早く検査すれば助かるという話にはなりません。なお、とにかくひたすらPCR検査をしまくって陽性ならせっせと病院送りというやり方をするとどうなるか、知りたければイタリアを見てみてください。
従って、舛添氏の発言のごときは、単に政府批判のために岡江さんの死を利用しているにすぎず、亡くなった方に対する冒涜以外の何ものでもないでしょう。
また、舛添氏の発言のように、あたかも検査が遅かったせいで助からなかったというような印象操作は、報道でもよく見受けられます。例えば:
- 「コロナ犠牲の父、ひつぎ越し抱く 道内遺族「人ごとと思わないで」」 << 「北海道新聞 どうしん電子版」
あたかもCOVID-19は検査を早く行えば助かるかのごとき誤解を、無責任に世に広めているのは、極めて罪深いと思います。
さて、かかってしまったら治す手立てがない、自分の体で闘って打ち勝つしかないCOVID-19なのですから、みんなかからないように努力するしかありません。うつらない、うつさないために、できることをするのみです。感染症予防の基本のキとして、今日も手洗い励行を。