小林亜星氏の手がけた音楽といえば、大方の人々にとって、テレビやラジオを通じてよく聞くものであると思うが、ユザワヤの「創作のひつじ時計」がある街に何らかのゆかりのある者にとっては、日常的に街で耳にするものであった。

ユザワヤの旧浦和店は、中山道とさくら草通りに面して建っていた。この近辺にはほかにもからくり時計があり、さらに時報チャイムもあるため、毎時0分になるといろいろなものが鳴り響くが、「創作のひつじ時計」は別格の存在感があった。

私は昔からこの音楽は隠れた名曲だと思っていた。作曲者が分からなかったので試しに検索してみたら、小林氏だという情報を得て大変驚いたものだ。

今、稼働する「創作のひつじ時計」は全国に一つもなくなってしまっている。そして、小林氏も亡くなったとの報に、何ともいえない寂しさにとらわれるばかりである。

ユザワヤの浦和店は現在、別の場所の商業施設内に入っている。大じかけの「創作のひつじ時計」の復活はならないにしても、何とか店内BGMでこの音楽だけでも復活させてもらえないかと、ひそかに願っている。