憎しみはひたすら人を闇に引きずり込んで考えを誤らせる魔物なので、今のところ直接被害当事者でもなんでもない私がみだりにプーチン憎しの感情をたぎらせたりすべきものではない。ただただ、ウクライナはどうしてこうなってしまったのかという哀しみと、ロシア軍はとどまってくれという願いを抱くばかりである。

しかし、これは傍観者ならではの甘い感傷でしかない。現に一方的に理不尽な侵略を受けている国の人々にしてみれば、自衛のために戦うしかないのだ。たとえ相手がどんな大国であり、自分たちがどんな小国であろうとも、だ。

命はなによりも大切なのだからウクライナは抵抗をやめて早々に降伏したほうがよい、などと言う人も日本にはいるようである。日本人は、降伏したことによりかつての敵国の占領下で多大な支援を受けつつ、軍事を手放して商工業にいそしみ、いくつもの幸運にも助けられ大いに経済発展を遂げた、という稀有な幸福を経験しているがために、一部には変な勘違いをしている人がいる。もし明日ロシアが北方領土から侵攻してきて、日本が即時降伏したら、SNSにロシアの悪口を書いただけで身柄を拘束される世の中になり、それが何十年続くことになるのか分からない、ということにすら思いが及ばないようだ。現在のロシアを見てみれば明らかだろうに。

降伏は必ずしも幸福につながるとは限らない。