埼玉県議会に自民党県議団から提出されていた〈お留守番禁止条例案〉こと県虐待禁止条例改正案が、取り下げられることとなった。

治安の悪い欧米諸国ではあるまいし、こんな馬鹿げた条例案が可決されてはたまったものではないので、無事取り下げに至ったことはなによりである。

ただ、このゴタゴタの中でかなり耳障りな雑音もあった。水着撮影会騒動からこのかた、公式サイトから電話番号もメールアドレスも削除して国民の批判の声に耳をふさぎ、その問題にはひたすらダンマリを決め込み、SNSでの発信もずいぶんおとなしくしていた、あの共産党埼玉県議団が、今般の〈お留守番禁止条例案〉の件でにわかに息を吹き返して騒ぎ始めたのである。

共産党県議団は X (Twitter) ではこのポストを狼煙として、以後盛んに同条例案の件で喜び勇んで抗議の発信を繰り返した。ほう、みんなもう水着撮影会騒動を忘れたとでも思ったか、この浅はかな奴らめ。自分たちのやらかしたことについては一言も何の見解表明もせず世間の声をひたすら無視し続けるくせに、行政や与党を叩けそうなネタがあれば何でもすぐに食いついてきて騒ぎ立てやがる。

このたびの〈お留守番禁止条例案〉は、先にも述べたように実に馬鹿げたものであって取り下げられるのは当然であり、この騒動は自民党県議団のとんでもない大失態だ。しかしながらなお、県議として県議会に条例案を提出するという議会民主制に則った手続きを踏み、世間からの圧倒的な批判の声を受けて取り下げるに至ったというだけでも、自民党県議団の一連の動きはかなりまともといえるのである。

水着撮影会騒動における共産党県議団はどうであったか。そう、今般の自民党県議団とはまるで正反対だった。共産党県議団は、県営公園プールを水着撮影会に貸し出すことを禁ずる条例案を県議会に提出するなど議会民主制の手続きを踏んだわけではなく、プール管理者の所へ押しかけていって議員の権威を笠に着て圧力をかけるという、議員や政治家ではなくカツドーカとしか思えない乱暴な行動をとった。また、一般国民のみならず弁護士や政治家ほか識者たちから大批判を受けても、今に至るまで反省の色など微塵も見せていない。

共産党県議団だけの問題ではない。同党中央も事実上これを容認していると考えられるので同罪だ。党中央は水着撮影会つぶしが党の方針ではないとするコメントを発表したことはないし、党中央から党県議団に対して厳重注意がなされたという話も聞かない。党中央は関係ないというなら、そう明言すればいいだけのことなのに、しない。そう、〈水着撮影会のごときけしからんイベント〉をつぶすことは党の意思なのだ。何と恐ろしい政党であろうか。彼らが例えば「宗教はアヘンだからけしからん」とか言いだしたら、国じゅうの仏閣、神社、教会などなどが──。

民主制の手続きを踏まずに権力の刃を国民に向けて独善的に要求を通そうとし、国民の声には耳をふさぎ、自らの失策に対して全く責任を負おうとしない無謬主義の共産党なんぞに、今回のことで自民党を批判する資格はつゆほどもない。恥を知れ、このファシストどもめ。

自民党県議団の提出した〈お留守番禁止条例案〉をめぐる騒動によって、何らかの重大な損害をこうむった人はひとりもいないだろう。しかし、共産党県議団が火をつけた水着撮影会騒動においては、多数のイベント関係者が突然(場合によってはわずか2日前に)仕事を奪われ、企業が大損害をこうむり、その被害総額は百万やそこらで済むものではない。その被害に対して手当てするのは直接的には行政すなわち県であるにせよ、そもそも騒動に火をつけた共産党に全く責任がないとは言わせない。何せ、共産党自身が水着撮影会つぶしを党の手柄のように喧伝しているのだ。

国民の人権を踏みにじり生命と財産を脅かす、国家と国民の敵、独裁主義と恐怖政治指向の集団である共産党が、国においても自治体においてもあってはならない害悪であることは、今や明白である。そんな害悪が行政や与党を叩くネタを見つけてはお祭り騒ぎを繰り返すアジテーションぶりは、すっかり見飽きたつまらない芝居でしかない。