昨夜のNHK大河ドラマ「光る君へ」第20回「望みの先に」では、いよいよ花山法皇に矢が射かけられたことから始まる長徳の変に突入しました。

この長徳の変、歴史解説などではたいてい、藤原道長が法皇絡みの騒動を利用して、政敵である藤原伊周、隆家兄弟を追い落とした政変、というふうに書かれています。けれども、伊周や隆家のふだんからの行状や、事の経緯はどうであれあろうことか法皇に矢を射るという所業のほか、いろいろなやらかしを考え合わせてみますに、道長が利用するもなにもあの2人は相応の処罰を受けただけのように思えます。

そのような朝廷内の政局と並行して、藤原為時がついに官職を得るに至る状況も描かれました。いったん淡路守に任じられた為時が、女官を通じて漢文の句を一条天皇に献じ、それを見た天皇が感動して任を越前守に変更した、というのが後世に言い伝えられているところですが、実際にあの句を書いて送ったのが為時ではなくまひろ(紫式部)の筆であった、というドラマの筋書きはなかなかアクロバティックでおもしろかったですね。元代筆屋のまひろの面目躍如といったところでしょうか。まあ、絶対に史実ではないと思いますけど(笑)。実際のところとしては、やはりドラマにも出てきたように、越前に多数の宋人が漂着していたため、越前守を漢語にたけた為時に急遽変更したという事情があったのだと思います。さすがに天皇があの漢文だけで決定を覆すとは思えませんからね。

さて、伊周と隆家が捕らえられる段に至っては、ききょう(清少納言)とまひろが妙な格好をして邸内に忍び込むという一体何のための演出なのか不明なギャグっぽい要素もありつつ、次回予告によればどうやら、中宮定子サロンの裏切り者のごとく噂されて里に下がることになる清少納言が『枕草子』の執筆に取りかかるという、まともな歴史ドラマの運びになりそうです。裏には藤原斉信の影があったりするところ、うまい脚本だなとまたまた感心しました。