昨夜のNHK大河ドラマ「光る君へ」第23回「雪の舞うころ」では、まひろ(紫式部)が越前で過ごす2年ほどの間におもしろいものが詰め込まれました。

越前守として赴任した藤原為時と、越前介の源光雅との、対決構図になるのかと思いきや、そういうありきたりの筋書きにならなかったところはよかったですね。光雅は決して私服を肥やす悪人の役どころではなく、自らの地元である越前と日本のことを思えばこそいろいろと謀っている、なかなかいい奴なのです。その点では、とにかく権威に逆らうのがセーギでカコイイと勘違いして社会を破壊することしか考えていない今時の駄目野党どもとは違います。為時と光雅が立場を越えて良い関係を築く方向へ向かうのは、見ていて気持ちがよかったですね。

ありきたりの筋書きにならなかったといえば、まひろと周明の関係もそうでした。越前でのささやかな恋物語とかまたそういう少女漫画風味の話に堕ちて、このドラマもしばらくはつまらなくなってしまうのかと少し嫌な予感がしていましたが、何とネタを明かせば国際ロマンス詐欺という展開です。大河ドラマや朝ドラというより往年の火サスといった感じで、次回への週間またぎとなりました。

一方、都はといえば、中宮定子と清少納言の様子も味わいのあるものでした。『枕草子』からの「うつくしきもの」の段を聞いたのは高校時代以来、とても久しぶりのことでした。

ドラマでは定子が現代語訳で読んでいましたが、原文はこちら:

鶏の雛の、足高に、白うをかしげに、衣短なるさまして、ひよひよとかしかましう鳴きて、人のしりさきに立ちてありくもをかし。また親の、ともに連れて立ちて走るも、みなうつくし。
[『枕草子』]

中古語の「うつくし」は、かわいらしい、いとおしい、という意味です。本当に性格の悪い人ならこんな文章は書けませんよねぇ。