昨夜放送のNHK大河ドラマ「光る君へ」は第26回「いけにえの姫」でありましたが、話の筋の一つはそのタイトルの通り藤原彰子の入内が決まる過程であり、もう一つの筋としてはまひろ(紫式部)と藤原宣孝の関係が冷えてゆくというものでした。

まひろからの文を宣孝がよそで見せびらかしていたことに彼女が腹を立て、そのことが二人の仲が悪くなったことの原因の一つとなったのは実際そうらしいのですが、正直、私も宣孝と同様に、こいつはめんどくさい女だなと思ったことであります。というのも、宣孝の振る舞いは当時の平安貴族としてはそう珍しいものではなかったからです。

プライベートでやりとりされた恋歌が和歌集などに数多く収録されていますが、それは要するに贈られた歌を見せびらかしたりするのも珍しくなかったので、当事者以外でも知っていたからです。和歌集では、それがどういう状況でやりとりされた歌なのか、詞書で細かく説明されていたりも。もちろん、中にはまひろのように、自分が男に贈った歌をよそで見せびらかされるのは嫌だという人もいたでしょうが、まあ、めんどくさい人だと思われるのがオチでしょう。そして実際の紫式部もそういうめんどくさい人だったわけですね。ついでにいうと、今回のまひろのように嫉妬を隠しもしない人というのも、ダサいなぁと思われるだけです。そういったところからすると本ドラマの今回は、『源氏物語』に登場するところの、嫉妬心を抑える良妻や、嫉妬に狂って生き霊と化して人を殺す女などの、伏線となっているのかもしれません。

さて、彰子の入内について、源倫子は当初は不承知だったものの、藤原道長の心の内を理解した彼女は、自分も腹を決めて命をかけると宣言します。彰子のために華やかな後宮を作る、と。これはもう、中宮定子サロンに対抗する彰子サロンの狼煙であるとともに、清少納言に対抗してまひろが召し出されることのフラグでありましょう。

ところでそれにしても、道長は一体そんな所へ何をしに来たのかという不思議な最後の最後──。