東京都知事選が終わって10日以上たつというのに、いつまでもネット炎上に油をそそぎ続けひたすら燎原の火を広げることに余念のない、当選者と接戦で2位につける気が満々だったのに終わってみれば当選者にダブルスコア以上を取られしかも3位という惨敗を喫した、元参院議員で現在無職の蓮舫氏であるが、そんな彼女がSNSで八つ当たりする無様をニヤニヤしながら眺めてばかりもいられなくなった。民主制の根幹を脅かす事態がこのほど出来したのだ。

「弁護士と相談している」とは、つまり、相談を受けた弁護士がどう言うかは別として、今のところ本人の意向としては法的手段を講じる意思がある、ということの表明と考えられる。分かりやすくいえば〈訴えてやる!〉の婉曲表現である。

蓮舫氏が朝日新聞に対して、一体何に関してそんなに憤っているのかというと、これだ:

すでに投稿者本人の過去の投稿から明らかである上に朝日新聞社も認めていることなので私も言及するが、この今野忍氏は同社の記者である。だから蓮舫氏は「朝日新聞への抗議ならびに質問状を出したい」と言っているのだ。

しかしながら私には、今野氏の投稿が批判的論評の域を出るものとは全く思えない。大方の良識的な人たちも同意するだろう。ネットで観測していても、弁護士の方々はそうコメントしている。一部のカツドーカ寄りで蓮舫氏推しの弁護士ですら、論点と話題のすり替えを無駄に試みたりするだけである。

今野氏のこの批判的論評に対し、蓮舫氏は反論するのではなく〈訴えてやる!〉と息巻いているわけだ。〈訴えてやる!〉と言うからには、今野氏の言語表現が議論の範疇ではなく名誉毀損や侮辱に相当するものだととらえているのだろう。しかし、彼は別に馬鹿だのカミツキガメだの死ねだのと罵倒しているわけではなく、例えば都知事選での蓮舫氏と共産党の関係を踏まえて「共産べったりなんて事実じゃん」などの論評を加えているにすぎない。繰り返すが、批判的論評の域を出るものではない。これに対して蓮舫氏は「弁護士と相談している」「朝日新聞への抗議ならびに質問状を出したい」と述べているのである。

蓮舫氏は、自分に対してちょっと批判的に論評しただけの新聞記者の口をも封じようとしている。こんなファシストが首都の知事になっていたら、どんな粛清と圧政が繰り広げられたことだろうかと想像すると、実に恐ろしい。こんなのが当選しなくてよかった。本当によかった。危うく民主制の根幹である表現の自由が奪われるところだった。民主制を破壊するファシストの台頭を許してはならない。われわれは選挙という民主的手続きによって、民主制の敵であるファシストを排除しなければならない。

〈私は黙らないが、お前は黙れ。私は自由に物言うが、私に自由に物言うことは許さない〉─。これがファシストでなくて何なのであろうか。

一応言っておくと、仮に蓮舫氏が今野氏を相手取って訴訟を起こしたところで、勝てる見込みはまずないだろうし、そもそもまともな弁護士であればそんなことはさせないだろう。まあ、訴訟を起こすのは国民の権利であるから、どうしてもやりたいのならやればいい。ただし、事前に相手に分かるように〈訴えてやる!〉という意思表示をすることは、極めて脅迫的で抑圧的だ。判例からみても場合によっては脅迫罪が成立し得る。

それも、元参院議員で現在無職の無様な都知事選敗退者とはいえ、ついこのあいだまで国政の場にいた人、かつては閣僚を経験した人が、一個人に対してこんな些細なことで実際に訴訟を起こすとなれば、スラップ訴訟との非難は免れまい。

訴えられても自分が勝つことが明らかとはいえ、訴訟に割く時間やら費用やらを考えたら、訴えられるということ自体が普通の個人にとっては恐怖だ。

最後に、ついでだから付け加えておきたいことがある。蓮舫氏さらに似非リベラル風情が政府・与党に向けてきた膨大な批判言辞の中には、〈手厳しい批判〉の域を超えた誹謗中傷の罵詈雑言も少なくない。いや、少なくないどころかおびただしい量に上る。蓮舫氏のこのたびの言論抑圧の振る舞いのおかげで、彼女が国会でやらかした品のない言説なども動画が掘り起こされネットに出回っている。

こんな人間が、自分がちょっと批判されただけで、誹謗中傷ではなく真っ当な論評をちょっと受けただけで、「弁護士と相談している」「抗議ならびに質問状を出したい」などと抜かす。このようなことを看過していたら、大真面目に、表現の自由が危機にさらされる。民主制の敵は再起不能なまでに叩きのめすべきだろう。