2人の親王との恋に燃えたあの名歌人がついに登場
昨夜のNHK大河ドラマ「光る君へ」第30回「つながる言の葉」では、強烈な新キャラが登場しました。あかね(和泉式部)です。
ほう、そうきたか、と思わず声を立てて笑いそうになりましたね。恋多き女として知られる和泉式部とはいえ、あそこまで鮮烈な形で登場してくれるとは。
平安貴族社会では専ら「浮かれ女」(尻軽女)と呼ばれ、紫式部からも「素行に感心しないところがあるわね。口を開けばすらすら和歌が出てくるようなスタイルがいけていると評判だけど、こちらがビビるほど格調高い歌が詠めるってわけでもないのよね」(『紫式部日記』より当該箇所の超要約&超現代語訳)とこき落とされていた和泉式部。そんな彼女を、余計な説明なしにしっかりキャラ立ててしまう今回の初登場シーンは、これまた見事な脚本です。参りました。しかしすげえな、あのシースルー(笑)
あかねがあの場面で詠んだ和歌は、実際のものです。
声きけばあつさぞまさる蝉の羽のうすき衣は身に着たれども
和歌というのはどういう状況で詠まれたのかによって意味が変わってくるもので、この歌にしても、今回のような詠まれかたをすれば単に蝉の声が暑苦しいという夏の歌です。しかしこれ、男に送った歌だとすると、とても扇情的な意味を持ってきますよ。和泉式部のキャラとしてはそういう解釈のほうがおもしろいのではないでしょうか。「あなたの声を聞くと体が熱くなってくるの。わたし今、蝉の羽のように薄い衣だけをまとっているのよ」─。あらあら。
さて、今回は、女の幸せとは何かというのが全体を通じての線となっていました。夫を亡くしてシングルマザーとなり幼い娘に学問を授けようとしてイライラしているインテリまひろ(紫式部)の前に、下級貴族の分際で身分違いも甚だしい親王との恋なんかで浮き名を流すあかねをぶっ込んできたわけですよ。いずれ宮中で出会うことになる二人ですが、本作では先んじて四条宮でぶつけてきました。
次回予告の雰囲気からすると、趣味や道楽で物語を書いていたまひろが、これからいよいよプロの宮中作家デビューということになりそうです。前回は母として、そして今回をつなぎとし、次回はクセのある人々と交わりながら作家としての女性の姿になってゆくのでしょう。