昨夜のNHK大河ドラマ「光る君へ」第37回「波紋」では、順風満帆と見える藤式部(紫式部)の生活に影がさしてきました。源倫子や赤染衛門との間にも少々風が吹きそうな気配で、次回以降が不穏です。

久しぶりに里帰りした藤式部ですが、娘の藤原賢子とは相変わらずどうもうまくいかないようです。父、藤原為時と藤式部との会話にもあったように、賢子は本が好きで気難しいところがあるのが藤式部に似ているわけですが、為時が言っていたようにいずれ賢子もそのうち藤式部の立場を分かるようになるでしょう。史実の賢子は将来、藤式部を継ぐようにして中宮彰子に仕えることになりますので、その時には、今回のように今の質素な暮らしへの恨みを母にぶつけたことも思い出となることでしょう。

そんな賢子が藤式部と違う点といえば、恋多き女に育ってゆくところなのですが、これは藤原宣孝の血を引いているというべきでしょう。もっとも、ドラマでは賢子の実の父親は藤原道長ということになっていますから、そういう意味で彼女の振る舞いはあまり派手に描かれないかもしれません。

彰子が『源氏物語』の製本を土産として内裏へ戻ると、一条天皇の発案により朗読会が藤壺で催され、さながら彰子サロンのグランドオープンとなりました。彰子の輝かしい時代の到来です。

最終的に全部で54帖を数えることになる『源氏物語』のうち、現時点で仕上がっているのが第33帖までとのこと。確認してみたところ、次の第34帖「若菜」が光源氏の絶頂期になるらしく、ドラマでは藤式部が「若菜」に登場する女三宮のことを執筆する場面が出てきました。

さて、藤式部がその執筆中の深夜、藤壺に盗人が入って2人の女房が衣をはぎ取られる被害に遭います。私はたまたま最近聞いて知っていたのですが、実際に2人の女房が強盗に遭う事件があったらしいです。内裏の警備って今の感覚からすると、意外とかなり緩いものだったみたいでして。実際の事件は大晦日の夜に起き、藤式部が駆けつけ、宿直に弟の藤原惟規がいるからと使いをやったところ、惟規は宿直をサボって実家でのほほんとしていて役立たずだったというオチが付いているのですが、長くなるからかドラマではやりませんでしたね。

波紋がいくつもあった今回の最後は、清少納言が藤壺へやって来て藤式部と再会するところで終わりました。『紫式部日記』に清少納言のことが一方的にボロクソに書かれていますけど、清少納言のほうが『源氏物語』をどう見ていたのか(そもそも読んでいたのか)という記録は残っていませんので、どんな感想が語られるかは次回しょっぱなの見どころです。