昨夜のNHK大河ドラマ「光る君へ」第39回「とだえぬ絆」では、冒頭から程なく藤式部(紫式部)が「宿世」の字をつづって手を止めるところから、様々な〈絆〉が再確認されてゆく流れでした。「宿世」は『源氏物語』の中でやたらたくさん使われる言葉ですね。

藤式部の弟、藤原惟規が口を滑らせ、そこから最後まで今回の流れの中心にあったのは彼でした。藤式部と藤原道長の絆、道長と四納言の絆、藤原伊周と隆家の兄弟の絆、藤原北家本流と中関白家の壁を越えた道長と隆家の絆、一条天皇と亡き皇后定子の絆、中宮彰子と藤原妍子の姉妹の絆、彰子と敦康親王の絆──。

そして、藤式部と惟規の姉弟の絆が確かめられ、「きっと、みんなうまくいくよ」と言葉を残した惟規は父の藤原為時とともに越後へ向かいます。が、その途上で急病を得て、越後に到着した時には危篤、そのまま亡くなってしまいました。

みやこには恋しき人のあまたあればなほこのたびはいかむとぞ思ふ
[藤原惟規]

惟規はこの辞世の「思」まで書いたところで息絶えてしまい、為時が末尾の「ふ」を書き足してやった、と伝えられています。これはドラマでも再現されていて、惟規は「思」まで書いて筆が左へ大きくそれ、そのまま亡くなりましたが、都の藤式部たちのもとへ届けられたものには「ふ」が書き足されていました。

今回主役の惟規の死によって、最後に、藤式部と藤原賢子の母娘の絆が確かめられるという、なかなかに涙をそそる締めとなりました。