今の国会の平和ボケに重ねられる平安中期の朝廷の平和ボケ
昨夜放送のNHK大河ドラマ「光る君へ」は、第47回「哀しくとも」──でありましたが、哀しくとも人生は続いてゆくという重いテーマよりも、国家有事に際しての平安中期の朝廷の平和ボケぶりがやたら印象に残る滑稽な回であったように思います。
あの陣定の様子がまさに現在のわが国の国会の有り様に重なって見えないとしたら、自分自身が平和ボケにずっぽりはまっていることが自覚できていない証拠ですよ。あるいは、ちゃんとそう見えるにしても、そんなものを書く脚本家はウヨクだ、グンコクシュギシャだ、イツカキタミチだなどと '70年代の進歩的知識人みたいなことしか思えない人は、もう救いようがないからどうでもいいです。
さて、史実ではあれよりもっとひどかったらしいのですよね。まず太宰府の藤原隆家から飛駅使により朝廷に届けられた報告文書に、公文書の書式に沿っていない部分があってけしからん、という話になったようですよ。そして、その日の陣定には重鎮が欠席しており、居合わせた面子で判断できる内容ではなかったため、翌日回しになりましたとさ、この国家の一大事の件が。なお、隆家は公文書と同時に私的な文書を藤原実資に送っていて、それを読んだ実資が翌日、先に太閤の藤原道長に相談の上、陣定に出て公卿たちを一喝したのはドラマの通りです。
さらには、九州の武者たちの奮戦により刀伊の海賊を見事撃退したものの、朝廷の命より先に現地で勝手にやった戦だから恩賞はやらないなどと公卿たちが抜かし、そんなふうでは国家危急の折に誰も戦ってくれなくなるぞと実資がキレたのも、ドラマの通りです。これね、本当に今のわが国の国会なのですよ。たとえどんな緊急事態であろうとも国会の承認なしに自衛隊が勝手に動くなんてけしからん、事後承認なぞあり得ない、とか抜かしているアレな勢力がいますよね。
一応、脚本家の名誉(?)のために言っておきますが、今回の刀伊の入寇をめぐるドラマの筋書きは概ね史実に忠実に書き起こしただけで、脚本家が特に自分の政治思想を含ませたりしているわけではないと思います。だって単に史実そのまんまだもん。