何やら世の中がキラキラする日ではありますが、風邪を押して買い物に出かけて帰ってきてからはひたすらくすぶっているところです。この調子だともうひと晩寝れば復活できそうです。

さて、ここのところネットで騒がしいこの件ですが──

さすが法律関係サイトの解説なので、大事なことは大方説明し尽くされていると思います。

これは記事中にも書いてあることですが、改めて一つ強調しておきたいことがあります。勘違いしている人が多いのですけど、刑事裁判でいう「無罪」とは〈被告人の身は潔白である〉という意味ではありません。〈有罪と認定する十分な根拠がない〉という意味です。有罪の可能性が90%の状況だとしても、残りの10%で「無罪」になり得ます。

裁判官は、倫理的に見てよくないことをした人を、「悪い人だから有罪」にするのではなく、「犯罪の構成要件(刑法の条文に書かれている要件)に該当する事実が認定できる」ときに、有罪にします。

このような事実の立証責任を負うのは検察官で、合理的な疑いをさし挟まない程度の立証が必要です。

合理的な疑いが残っていれば、「疑わしきは被告人の利益に」という考え方に基づき、裁判所は無罪判決を下すことになります。

今回、逆転の無罪判決が言い渡されたということは、裁判で争われていることについて検察官側が有罪の立証に失敗した結果ともみることができます。

なお、今回の被告人2人に控訴審で逆転無罪判決が出たのは、報道によれば、事件被害者の供述の一部に虚偽があって、裁判所がその供述を信用することができず「女性に同意があった疑いを払拭できない」と判断したことなどによります。

判決理由で飯島裁判長は、女性が被害申告した主な目的は「(行為を撮影した)動画の拡散防止にあったことは明らか」とし、その目的達成のために「状況を誇張するなど虚偽供述をする動機があった」と被害供述の信用性を疑問視した。その上で、動画で確認できる言動などは「暴行、脅迫に当たるとは認められない」とした。

注意すべきこととして、「女性に同意があった疑いを払拭できない」というのは〈女性に同意があった〉という意味ではありません。〈女性に同意がなかったと認定する十分な根拠がない〉という意味です。つまり「合理的な疑いが残っていれば、「疑わしきは被告人の利益に」という考え方に基づき、裁判所は無罪判決を下すことにな」ったということです。

女性が嘘をつくはずがない、複数の男との性行に同意する女性がいるわけがない、わたしだったら絶対に嫌、悪いのは医大生のボンボンどもに決まっている──といった主観だけで、無罪判決を出した裁判官をクビにしろなどと騒がれてもねぇ。判決に不服があれば検察側が最高裁に上告するだけのことなのに(だって制度上そうなっていますし、いつもそうでしょう)、なぜ今回に限って高裁の判事をクビにしろという騒ぎが湧いてくるのやら。中学の公民や高校の現社の教科書からちゃんとやり直してもらいたいものですが、まあ、似非フェミに物を言うだけ無駄でしょうな。

そして恐ろしいのは、そんな騒ぎを煽っている者らの中に、チシキジンっぽいのとか共産党の地方議員とかが混じっていたりするという事実。この国は本当に大丈夫なのだろうかと心配になってきます。

そうそう、例の裁判官のクビを求めるネット署名活動についてですが、署名が集まったあとで文面が改変されていたり、そもそも書いてあることが事実と異なっていたりするので、注意が必要です。