無断駐車ではなかった無断駐車
先日ネットでプチ騒動になっていた件です。
- 「コスモスが謝罪、「無断駐車」警告は誤り 共用駐車場の認識不足が原因」 << 「おたくま経済新聞」
時系列をまとめると──
- 大阪府松原市のラーメン店「一新家」に来た客が、店の駐車場に車を置いて食事。
- 車に戻ってみたら、隣接するドラッグストア「コスモス」の名で、無断駐車につき看板告知の通り1万円を請求する旨の紙が。客が改めて見回すと、一新家とコスモスの駐車場は隣接していて、間に柵はあるものの行き来できるようになっているし、看板の立て方も共用駐車場としか思えない。
- 客が X (Twitter) に投稿したことにより、徐々に話題に。
- ともあれ、客は駐車場を間違えて「無断駐車」した事実は認めることにし、ただしコスモスの店舗に1万円を払うのではなく、1万円の振込先をコスモス本部にメールで問い合わせ。
- コスモス本部より返信:「無断駐車は断る。戒めるために1万円云々と警告している。今回だけは大目に見てやるから払わなくてよい。今後無断駐車はしないように」(趣意)
- 客からコスモス本部へ再度問い合わせ:「一新家との境界が曖昧で共用駐車場にしか見えないのは何とかならないのか」(趣意)
- コスモス本部より客に電話:「すんません、そこは一新家との共用駐車場でした。うちの店舗従業員が分かっていませんでした」(趣意)
この件、なかなかおもしろくてですね。
まず、駐車場でたまに見かける「無断駐車は罰金1万円」みたいな警告ですが、法律上は無効です。知っている人は知っているので、そういう無駄なことはやめたほうがいいと思います。厳密に言うと「そんな警告には気づかなかった。見かけた覚えがない」で済みます。無断駐車に対しては、近隣の駐車場料金の相場に照らして相応額を請求すべく訴訟を起こすという手順が必要になり、その際にはラーメンを食っていただけの時間で1万円なんていう金額はまず通らないでしょう。まあ、そのせいで無断駐車を駆逐できないという問題もありますが。
とはいえ、無断駐車抑制の効果を期待して1万円云々の警告を出すこと自体は勝手です。実際たまに見かけます。ただ、本件では、実際に店が1万円払えと要求してしまった点が異例です。元投稿を見ると分かりますが「ナンバーを控えさせていただきました」とまで書いているので、下手をするとその時点で恐喝未遂罪が成立した可能性があります。
なので、車に貼られた1万円払えという警告は無視してしまってかまわないのですが、今回おもしろいのは、分かりました払いますと言って本部へ振込先を問い合わせた点です。これはなるほどと膝を叩いてしまいましたね。この手は使えます。
さらにさらに、当該の駐車場は実は両店共用でしたというオチには、笑うしかありませんでした。これ、恐喝未遂罪に加えて詐欺未遂罪も成立しかねませんよ。
さて、この件はこんな顛末でしたけれども、一方で、無断駐車に対して打つべき有効な手がないという法律のバグもいいかげん何とかすべきですね。さんざん言われていることなのにまるで解決への動きが見えません。それを解決しないと、このたびのような1万円払え問題もまた起きるだろうと思います。