庵野秀明総監督『シン・ゴジラ』 日本、2016年

〔2016年8月19日(金)鑑賞〕

非常に高く評価したい部分と、非常に低く評価したい部分とが混在していて、しかもうっかり変なことを言うと無粋なネタバレになりかねないため、感想を書きにくい作品であるが、あえて一言で言うなら、もう2、3回見てもいいかなというぐらいの気持ちにはさせてくれる一本である。非常に低く評価したい部分はありながらも、非常に高く評価したい部分にそれだけの魅力があるということだ。

“元祖”ゴジラの要素を継承しつつ、これまでのゴジラ作品にはない新たなゴジラ像を提示してくれる。「ヤシオリ作戦」「アメノハバキリ」などの用語にニヤリとした人は多いだろう。総監督は「エヴァンゲリオン」シリーズで知られる庵野秀明氏であるが、本作の映像の構図はまさしく(良い意味で)アニメのそれである。ただ、人物もどこかアニメ的なのはどうかとも思う(石原さとみとか)。

特撮映像の持つリアリティがかつてない高さであることもさることながら、日本政府の対応ぶりにも妙なリアリティがあって、ちょっと滑稽ですらある。というのも、制作に当たっては防衛省の協力を得て綿密なシミュレーションを行ったにとどまらず、専門用語を滑らかに早口で使い回す官僚の話し方まで再現したという。

予告篇を見て映像のすごさを期待して本篇を見てみたら、予告篇に出ている部分以外は大したことがなくてがっかりした、という体験が私にはあるのだけれど、本作についてはそのような心配は全く無用である。予告篇でふくらんだ期待を十分に満足させてくれることは請け合っておく。日本の特撮技術はもはやハリウッドの後塵を拝してはいない。

推奨度: 70点(/100)