10年前の今日、“16歳の少女”が“歌手デビュー”した。10年たった今日、彼女は“16歳の少女”だ。

初音ミクが発売された2007年当時、私は実にくだらないものだと思っていたのだが、 '10年3月9日に Zepp Tokyo で行われたコンサートの映像を見た時、私の意識はガラリと変わってしまった。

透過スクリーンを使ったコンサートはこれが初めてではなく、その半年前にも行われていたが、とにかく私が初めて見たのは '10年3月のものだ。ここまでやるのなら、もはやれっきとしたカルチャーではないかと、そう思った。そして、改めて初音ミクについてあれこれ読んでいるうちに、コンテンツというよりメディアとしてのありようが、とても興味深く感じられた。

翌 '11年、もともとネットで国境を越えて認知されていた初音ミクは、LA公演を成功させる。

LAで見せられた映像では、フレームレートが大幅に上げられた上に透過スクリーン技術が格段に改善され、“滑らかに動き、かつ像が緻密で透き通らない初音ミク”はファンを大いに驚かせた。

同年、何と初音ミクは Google Chrome のテレビCMに採用される。

このCMは何が驚異かというと、世界のIT大手のCMであることに加え、やはりコンテンツというよりメディアとしての初音ミクの魅力が見事に1分でまとめられている、ということだろう。

翌 '12年、初音ミクは故・冨田勲の交響楽にボーカルとして採用される。

もはや初音ミクは“ネットの媒体”ではなくなった。

初音ミク──まだまだ止まらない。

きっとこの先にあるのは '20年の東京五輪だと、私は期待している。